『疫病と世界史』William H. McNeill

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読了は2012-3年ごろ? 20140824メモ化.

上巻

慢性的な伝染病, 精神病, 老衰は常に存在するもの.

一方で感染症が, それまで流行したことのない住民に広がると, 患者のかなりの割合が死亡する. しかも, 健康な年代の男女が死にやすい.

新しい技術が開発されるたびに, 資源の安易な浪費とその急速な枯渇を繰り返してきた

異なる気候へ人類が拡散して適応したことで, 被寄生度の格差が生まれた. 熱帯地方では微小な寄生生物との共存が重要であったが, 寒冷・低湿地域に広まるにつれ大型動物との共存がテーマになっていった.

居住区の近くに糞便が集められていれば, 腸内寄生生物が宿主から宿主へと移動することが容易になる.

文明化した共同体における, 疾病に関する一つの重大な変化: 農耕民の人口密度が増加して, ある一線を超えた所でヒト以外の中間宿主を介することなくいつまでも存続することができるようになる.

病原菌の宿主がいきなり別の種になる, というケースは今でも時々起こる. 1891年の牛痘, 1959年オニョンニョン熱 ;; 名前わろた

はしかの流行パターンが分析されている. 常時7000人の感受性ある個人がいないとはしかが維持されない. 都会での生活, 子供を学校に通わせる習慣などを考慮して, はしかが存続するための人口は50万人, らしい.

人口が集中することによる疾病, それの引き起こす人口の恒常的減少という現象. に対応して人的資源の再生産構造が必要であった.

田舎からの食料と人口の流入ありきで, 都市の生活が維持されていた.

ヒトの巨大なポピュレーションの内部でのみ生き永らえ得る「小児病」と共存することを覚えたとき, 文明社会は1個の強力きわまる生物学兵器を手に入れた. この兵器は, それまで孤立していた小さなヒト集団と接触する際, 常にその威力を発揮した. 文明社会特有の病気が, その病原菌に曝された経験を持たないポピュレーションに向けて放たれたとき, これは極度に高い罹患率(りかんりつ)を示し, しかも, もはやそれは, 小児だけがかかる, 深刻ではないとは言えないがなんとか切り抜けられる病気ではなく, 老若を問わず成員多数の生命を奪い去る疫病だったのである.

上巻p.126

諸文明が, 都市を中心とした社会組織に周辺の異民族を同化することに成功してきたのは, 上述の疫学的パターンが原因であると考えられる.

マクロ寄生, ミクロ寄生のバランスが, 紀元前の10世紀間, 人口増が可能なバランスに保たれていた.

下巻

ジンギスカンによる中国全土とロシア大部分の支配(1350年ごろまで)

ペストの流行は齧歯類の生活パターンによって説明される. 生まれ育った穴を外れて何マイルも遠くへさまよう個体が出てくる. どこか別の共同体を発見するとそこに入り込む. 遺伝子を交換する有効な方法であるが, 一方で病原体の拡散にも一役買っていた.

ペスト絶頂期には

完全な健康を保っている人物が24時間も経たないうちに悲惨な死を遂げてしまうということはざらにあった.

下巻 p.58

そのような世界観で, 主知的神学はその支持を失い失墜. ペスト時代には, 気まぐれで説明できない破滅を受け入れる哲学が受け入れられた.

スペイン人がインディオに攻め入った時, 疫病効果が猛威を振るった.

1900年, 公衆衛生の進歩により, 人類史上はじめて, 田舎からの流入に依存することなく都市だけで人口を維持することが可能になった. それまで都市は健康な人間を耐えず補充していなければ維持できないものだった.