『記憶のしくみ(上)』エリック・R・カンデルら
by エリック・カンデルら
20140822ごろ開始 - 20140825読了
感想
知ってる内容が多かったが, 完全なindex式辞書本でもなく長々としたストーリーでもなく, バランスがよいので「あれこのへんどうだっけ」という時に少し時間を取って読み返すとよさそう.
メモ
てんかん治療のため海馬を切除した患者, H.M. 彼は新しい物事を記憶することができなくなった.
ただし非陳述記憶, 運動能力や反射神経タスクは向上した. 以前実験したことは忘れてるが. パブロフ, ソーンダイクのオペラント条件付けもこの辺の話.
- 非陳述記憶の一番単純なのは「慣れ」
- 慣れとは、単調な反復刺激を重要なものではないとして無視できるようになること
神経信号によって伝えられる情報の性質は, 信号そのものの性質によるのではなく, 信号が脳内を移動する経路の違いによって決定されるということだ. つまり脳は, それぞれの現象ごとに専用に用意された経路を通って運ばれてくる電気信号の「パターン」を解析し, それによって情報の種類を解釈するのである.
上巻p.84
タイミングの重要性. 学習は蓄積される. 繰り返し与える刺激が記憶に繋がる.
古典的条件付けは神経伝達物質の放出増加により起こる.
いったん状況を脳内で構築すると, 記憶を再現するのは簡単. これが陳述記憶.
記憶が強化される条件
- 興味と好み. 好きなモノは覚えられる.
- 反復学習. 記憶しようと意識して努力すること.
- ちょいちょい記憶したことをテストする. アウトプットで増強される.
記憶はどこにある? どこか一箇所にstoreされているのではない. 想起は記憶の再構築. 想起した経験が実際は過去の事実と異なっていても, それを主観的に説得力のあるものとして認識する. 記憶は心の状態, コンテクストに影響されるゆるふわなもの.
もし忘却がなければどうなるか. 完全な記憶力を持つロシアのシェレシェフスキー. 記憶が完全であるために, 共通点の抽出, 一般化, 全体像の形成ができなかった.
忘却は記憶の消去か, 想起の抑圧か?
新しい情報で記憶は書き換えられる.
基本的に記憶は不完全かつ歪曲されやすいもの.
想起とは完全な記録の再生などではなく, 断片から筋の通った全体像を組み立て直すものである.
;; 断片が多ければ全体像は事実に近くなるが, という
長期記憶: 記憶の安定化システム
短期陳述記憶 -> 長期陳述記憶 への変換は, 単にシナプス結合が強くなるだけの問題ではない.
短期記憶 = 作業記憶 = working memory
視覚情報の処理は前頭皮質や内側側頭葉などいろんな領域へ辿り着く. ただし, 内側側頭葉は最終的な長期記憶の保存場所ではない.
海馬は陳述記憶の要. 学習プロセス全体に関与しているらしい. 一旦安定化してしまうと海馬は(その記憶内容に関しては)仕事しなくなる. ただしこの記憶の安定化プロセスで何が起こっているかはまだわかっていない.
が, これらの神経変化のいくつかは睡眠時に起こっているのではないかという説がある.
意味記憶とは「世界に関する知識を組織化した記憶」 by エンデル・タルヴィング 特定の出来事と結びつかない, 私はこれをしっているという記憶.
エピソード記憶はそれに対して, 出来事の起こった空間(場所と時間)を含む.
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