『偶然と必然―現代生物学の思想的問いかけ』ジャック・モノー

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20140813ごろ開始, 同日読了

1970年代の本. とは思えないほど本質っぽいとこついてて流石

生命の特性

  1. 合目的性 -- タンパク質. 合目的な構造と働きを司る.
  2. 自律的形態発生
  3. 複製の不変性 -- DNA.

ある任意の生物が持つ「不変性の内容」は, 世代から世代へ伝達され, その種にとって特異的な標準となる構造を決める情報の量に等しい.

合目的性とタンパク質

合目的性の概念は, 方向づけられ, 首尾一貫し, 建設的な活動という観念を内容している. タンパク質は, 以上の基準からして, 生物の合目的的性能に必要不可欠の分子的因子とみなされる.

p.52

一貫した機能, 合目的性に必須の因子はいわゆる"調整"タンパク質であり, これらが科学的なシグナルを検出している.

合目的性の根源は突き詰めればタンパク質の立体的特異性である.

タンパク質こそは, 化学機械の活動を一定の方向に導き, 首尾一貫した機能を果たさせ, そしてその機械自身を組み立てるものなのである. これらの合目的的性能は, 突き詰めれば, すべてタンパク質のもつ《立体的特異性》にもとづくのである.

p.53

他の分子を「形」で認知する能力.

ある生物の合目的的な働きや構造はすべて, それがいかなるものであれ, 原則として, 一個, 数個, あるいは非情に多数のタンパク質の立体的特異的な相互作用に帰せられると言ってよい.

p.54

タンパク質の機能的特性を研究するために, 構造の細部まで考える必要は必ずしもない.

  • タンパク分子量は1万から100万
  • アミノ酸分子量は100
  • つまり100-1万個のアミノ酸がタンパクを形成

マクスウェルの悪魔熱力学第二法則を破るものとして提唱された. 選択的に分子を透過させることで, エネルギーの消費なく片方を温められる => あれれーエントロピー増大の法則はー? という問題提起

マクスウェルの悪魔パラドックスを破るのは観測という視点. 見分けて扉を開閉する以上なんらかの観測を行っており, 観測はなんらかの相互作用の結果である. そのエネルギーを考慮すれば第二法則は破られない, と.

こっから情報は負のエントロピーと等価であるという話につながる. シャノンさん. 秩序の創造は科学ポテンシャルの消費という対価により作られる

タンパクの構造, に帰着させてるのは個人的にすごく好きな考え

ゲノムの規定する配列情報より豊か. エピジェネ, とかもあるけどタンパク自信が情報量を持ってるのではと 量子の同一的な見方はもはや精神論ではなくそれが絶対とされている

分子個体発生

機械は"外力"によってその形が作られるが, 生物は自発的かつ自律的に形を組み上げる. そしてそれを突き詰めるとタンパク質の立体特異的な識別性が根源となっている.

認識能力の《秘密》は, タンパク質の一次構造に求められる.

;; アンフィンセンのドグマか. シャペロンの存在やプリオンが反証となり破綻している.

複製の不変性

複製不変性は, 非共有結合によるDNA複合体, ダブルストランドの立体化学的相補性に基づく.

ベルクソンは「生命の原理は進化そのものである」と主張したが, そうではない.

現代生物学は, 生物のすべての特性は"分子的保存"という基本的機構にもとづいているのだということを認めるのである. 現代の生物理論にとっては, "進化はなんら生物の特性ではない". なんとなれば, 進化は, 生物の唯一の特権である保存機構の"不完全さそのもの"に根ざしているからである.

p.136

進化はどちらかと言えば生物の本質そのものというより, 以下のように物理学的側面が強い.

生物圏における進化は"時間的に方向性をもった"必然的に不可逆的な過程である. この方向は, エントロピーの増大法則, すなわち熱力学第二法則の命ずる方向と"同一"である. (中略)第二法則は統計学的考察に基づいているが, これは進化の不可逆性を示す考察と"同一"のものである. じっさい, "進化の不可逆性を, 生物圏における熱力学第二法則のひとつの表現とみなすことはきわめて正当なことである".

p.143

熱力学第二法則は統計的予言. なので, "非情に僅かな距離をきわめて短時間だけ動く"ばあいはエントロピーが縮小する方向に進むこともあり得る. 生物学ではこの「エントロピー逆行」が複製機構によってつかまえられ, 複製されたすえに淘汰によってふるい分けられる.

微視的偶然という膨大な貯蔵庫の中の, 無限に多くのどうでもよい出来事に混じって, 貴重な価値のある出来事がごく少し存在しており, それが選び出されることで淘汰的進化が起こるのであり, その意味では進化は一種の時間遡及機械(タイムマシン)だと言える.

P.143

キャプチャ

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