『知性はいつ生まれたか』ウィリアム・カルヴィン
- 作者: ウィリアム・H.カルヴィン,William H. Calvin,澤口俊之
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本
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20150217開始,同日読了
How Brains Think / William H. Calvin
もくじ
- 次に何をするか
- 適切な推測の進化
- 意識の階層をたどる
- 進化する知的な動物
- 知性の基礎としてのシンタックス
- なおつづく進化
- 小さな始まりから知的な行動をつくりあげる
- 超人的な知性の展望
1. 次に何をするか
意識の問題はあまりに大きすぎて科学で扱いかねてきた.心に対する機械的なアプローチが本質的な論点を長らく隠してきた.
2. 適切な推測の進化
意識は"神秘的な思考"と"単に優れたプログラム"のどちらなのか 「知性」を扱う際にIQのような単純な数値に落としこむのは間違い.
初心者がおかす誤りのひとつは,知性を,「それが目指す目的」や「複雑さ」で測ろうとすることだ.
p.31
動物の複雑な行動の多くは先天的.
ジェイムス・グールドは「融通性と創造性」を「本能の縄目を解き,問題に対する新しい対処法を作り出す能力」と説明しているが,これによって「知性とは何か」という設問がかなり絞られてくる.
言語を解するように見える動物も他の情報を遮断して音声だけだとわかんない
3. 意識の階層をたどる
カオスと複雑系についての研究が示してきたように,決定論は実際はさほど重要な問題ではなく,カクテル・パーティーでの会話のきっかけにしやすいという程度のものであり,説明を避けようとしてわざわざ量子力学をもちだす必要もほとんどない.
p.58
ペンローズさん...
著者に言わせれば"量子力学がある地下2階から意識という最上階の部屋へ飛び上がろうとする"試みであると.
- 意識がある != 覚醒している
- 意識という言葉には実に多くの類義語がある.
- 自己に関する感覚(自己感覚, 自己の気付き, 自意識)は高級な精神活動に属すると考えられる.
- 赤ん坊が意味もわからずマネすることからも,我々はある程度「真似するように配線されている」らしい
- 自己認識は「結果の予測」とその答え合わせ,という側面を持つ
読んだり聞いたりするとき,見聞きしていると思っているものの多くは実は記憶から生じている.カテゴリ記憶という.引き金になったものがわからない場合,その記憶を幻覚と呼ぶ.
ギルバート・ライルの言った「機械のなかの幽霊」という言葉.
;; 最初本かと思って調べたら別の著者がこの書名で出してる
4. 進化する知的な動物
社会的知能は知性の別の一面.新しい技術,解決すべき問題の持ち上がり.
社会的知能の自然選択は「生存のため」ではなく性選択的要素がほとんど.
地球視点で見ると氷が溶けたりまた増えたりしてて,いまはたまたま間氷期.まれに見る長い安定期らしい
5. 知性の基礎としてのシンタックス
我々の使う言語.文法的構造(syntax)が整備され, 喩えを使う. 筋道立てて類推し, 計画を立て,将来を思い描く.
- 言語が知性に与える影響.シンタックスはより精巧な心のモデルをつくるために使われるらしい.
- 手話を知らず育てられた耳の聞こえない少年は抽象的思考が出来ない
- 言語の習得自体にはどうも生得的プログラムがある.
シンタックスを解する心の構造を使って,可能な行動の別の組み合わせを検討する.これにより先のことを計画する能力を得ているのではないかと.
何かを探しまわる方法と,集めたデータを解析する方法に,最初の仮定がどんなに重大な影響を及ぼしているか,我々は理解していない.
p.162, スー・サベージ・ランボー, 1994
言事は何か,それが人間という種に何をもたらしたかについて完全に理解しなければ,自分自身も自分の世界も理解することができない.言語は,われわれの種を生み出し,われわれの住むこの世界をつくりだした
p.162, デレク・ピッカートン, 1990
6. なおつづく進化
「一つのものが別のものに続く」というのはかなり単純な概念
;; ショーペンハウアーの言う,人間に限らず動物も持ってる「悟性」のこと.
;; 因果律,原因から結果への一方向の認識.
出会ったことのないものを「予測」することはおそらくより高度な心の文法.
脳における時空パターン,そのいくつかは「大脳コード」とでも呼ぶべきもの.おばあさん細胞,のように具体的な結びつきではないのは明らかで,そうではなく対象や行為,思考のような抽象的なものを再現する.
一方長期記憶は時空パターンではありえない.脳の電気活動が一時的に停止しても失われないため.
;; ショックを受けたり昏睡した時に一時的に記憶が飛ぶの,diskにflushする前に電源落とされたみたいだな
7. 小さな始まりから知的な行動をつくりあげる
大脳コード間で繰り広げられるコピー競争,その物理的基盤(ニューロン)についてわかっていることを紹介する章.解剖学的説明.
あと信号伝達メタファー.
8. 超人的な知性の展望
われわれにはこころの生活があり,心の生活に動的な自然選択プロセスが働くおかげで自己を作り出している.
ダーウィン的プロセスはメタファーのためのマシンを与える.
人間を不滅の機械として捉えるより,遺伝子やミームの乗り物としてとらえたほうがわかりやすい.
最初に作られた人間と同じ仕事ができる装置は,少なくとも論理的で,カテゴリー化ができ,言語を理解するだろう.そのような最初の人間仕様の機械さえ,一見してそれとわかるほど「意識的」であり,われわれのように自己中心的だろう.
p.291
未来の世界は厳しい戦いであり,われわれの知性の限界にたいしてより過酷な要求をつきつけさえするだろう.それは,寝そべってロボットの奴隷をはべらせることのできる心地良いハンモックではない.
- 293, ノーバート・ウィーナー, 1950年
超人的知性が出てきた時の問題
- その超人的知性がわれわれと同じ環境に適合するか
- 価値観の違い
- 超人の登場に対する人間の反応を調節する