『選択の自由』フリードマン

選択の自由[新装版]―自立社会への挑戦

選択の自由[新装版]―自立社会への挑戦

20150329開始,同日読了

Wikipediaから雑に事前情報 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%B3

マネタリズムを主張.新自由主義を代表するマクロ経済学者. 広義の新自由主義を他に主張したのはハイエクノーム・チョムスキーなど.あんた言語学者ちゃうん... 新,言うてるけど自由主義自体の定義が困難. わりと用語自体ふわっとしてるのね.了解 新自由主義は結果主義的なリバタリアン.実利的に政府の干渉を最小限にすべき,というもの

マネタリスト(マネタリズム) マクロ経済の変動においてマネーサプライ中央銀行など貨幣的側面を重視する経済学の一派.

「経済生産より早いペースで貨幣供給量が増えることによってのみ生まれ得るという意味で、インフレーションとはいついかなる場合も貨幣的現象である」

マネーサプライが短期の経済変動に大きな影響を与える,ので,"裁量的"(??)な貨幣供給・金融政策に否定的. 効果が出るまでタイムラグがあるため.

インフレや景気変動を安定化させるために、貨幣供給は裁量ではなく、一律のルールに基づいて行うべきである

貨幣数量方程式

Mv = PY

M: 貨幣供給量 v: 貨幣の所得流通速度 P: 価格水準 Y: 産出物の数量

v, P が一定ならば「貨幣供給量で物価は操作できる」とする. ちなみにケインズ経済学はこれには同意しない.

1979-1982,米国連銀はマネタリズムを採用,実施. そこそこ経済回復はうまくいったが,超高金利・超ドル高が続き金融危機,1982に放棄.

で,とくにフリードマンの主張に戻ってくる. 貨幣の中立性: マネーサプライの変動は長期的には物価にのみ影響して実物経済には影響を与えない,とする主張. スタグフレーションのうちインフレのみを抑制.

最小限の政府,具体的には犯罪・不正の排除と貧困の解消

フリードマン『選択の自由』本編

日本向けのまえがき アメリカがたどった「国民の経済活動を管理し所得を再分配する」道を日本もまた辿ろうとしている.

日本がまだ採用していない諸政策 -- いったん採用してしまえば逆転させることが至難だが,これを最初から採用しないように決定することは比較的に容易な諸政策 -- を日本が採用することになればどんな結果に陥ることになるかをおお,本書は映画の試写会のように前もって日本の人々に示すことになるからだ.

  • 1章: 市場の威力
  • 2章: 統制という暴政
  • 3章: 大恐慌の真の原因
  • 4章: ゆりかごから墓場まで
  • 5章: 何のための平等か
  • 6章: 学校教育制度の退廃
  • 7章: 消費者を守るものは誰か
  • 8章: 労働者を守るものは誰か
  • 9章: インフレに対する治療
  • 10章: 流れは変わり始めた

1章: 市場の威力

アダム・スミスの唱えた「人々の協同が真に自発的なものである限り,交換の当事者たちである双方が利益を得られない限り交換は発生しない」という原理.自発的交換.

これが非常によく働き,価格機構によって社会がうまく動く(雑)

政府の役割.これもアダム・スミスが理想的な解答を提示しており

  1. その社会を他の独立社会による暴力や侵略に対し防衛する任務
  2. その社会のすべての構成員を他のどんな構成員による不正や強制からも出来る限り保護する任務
  3. ある種の公共事業や公共施設を樹立・維持する任務
  4. ※ 費用対効果が見合わないのでどんな個人もやろうとしない(が必要な)もの.

だがこの(3)任務は政府機能の拡大を許す言い訳となる可能性がある

「外部効果(近接効果)」とは,これを受けた人々に対して,それが損害を賠償したり,利益の代価を要求したりすることが不可能(or 費用があまりに高く付く)ような影響.

;; 何らかの理由によって相互作用が出来ない,一方通行の効果.

アダム・スミスが明示的には述べていない(4)つめの役割「"責任を果たすことができる個人"とみなせないメンバーの保護」

自由とは,責任を果たせる個人のためにだけ,その達成を主張できる目的だ.

p.54

狂人や子どもたちも自由を持たなければならない,とは言えない.どこかで線引きをしなければならない.

2章: 統制という暴政

まったくのところ,なにかの分野で,なんらか「利害関係がからまった詭弁」を弄していないものは,われわれのなかにほとんど一人もいない

p.64

誰かの「特殊利益」のために奉仕する政策により,政府がないときよりもひどい不利益を受けている

自由な国際貿易が世界全体の利益を最大化することにはすべての経済学者が同意するだろうが,いまでは関税が一般的なものに.

3章: 大恐慌の真の原因

1929大恐慌.これを受け「資本主義は根本的に不安定であり,政府はもっと積極的に経済に介入する役割を果たすべき」という風潮に. ケインズはそれをサポートする理論を与える.

金融恐慌は経済恐慌の原因でもあり結果でもあった.金融恐慌はかなりの程度まで連邦準備制度が取った政策が引き起こした.

大恐慌最初の2年間,1929から1931, アメリカの金準備は増大していた.本来この状況下では国内の通貨量を増大させることで金の流入に対応すべきだった.

4章: ゆりかごから墓場まで

福祉の話.社会福祉政策が掲げた目的は素晴らしかったが,政策のもたらした実際の結果は失望でしかなかった.

社会福祉プログラム,受けている人は「これでは不十分だ」と文句を言い, 負担する側は「重すぎる」と文句をいう.

真の貧困者に行き渡っていない.

5章: 何のための平等か

アメリカ独立後は神の前の平等,その後機会の平等,結果の平等へと移り変わってゆく.結果の平等が言われ始めたのは最近.

6章: 学校教育制度の退廃

教育費は上昇する一方教育の質は低下

上流所得階級の人は子供の教育環境を選択できる経済的余裕がある.

親の所得や社会的な地位や住んでいる所や人種にまったく無関係に,すべての若い男女が高等教育を受ける機会を持つことができることほど,きわめて望ましいことはない. ただしその際に必要な条件は,その学校教育がやがて稼ぐことを可能にしてくれる将来にけるより高い所得か,それとも現在の所得かのどちらかを基礎として,必要な経費を喜んでそれらの若者たちが自己負担において支払うということだ.

p.292

7章: 消費者を守るものは誰か

社会的有機体の行動はわれわれの意志によってどうにでもなる,という「誤解」

実際は猫がワンと鳴かないような生物的限界に負けず劣らず,その組織の体制は変えられない特性になっている.

8章: 労働者を守るものは誰か

過去2世紀を通じて労働の環境は改善されてきた.しかしそれを果たしたのは政府でも労働組合でもない.

労働組合 != 労働者.

労働組合が獲得する賃上げは,他の労働者の犠牲のもとに成り立っている.

9章: インフレに対する治療

インフレは資本主義特有の現象ではない.共産主義でも起こったことがある.

インフレは例外なしに貨幣的現象である.証拠は揃っているにもかかわらずこの事実が否定されている一因は,各国がインフレに対する自分の責任を隠そうと煙幕を張っていることにある.

労働組合が身代わり的に批判されることがあるが関係ない.

  1. インフレは通貨の供給が産出よりももっと高い率において増大させられることから発生する貨幣的な現象である.
  2. 今日の世界では政府が通貨供給量を決定している
  3. インフレに対するたったひとつの治療薬は「通貨供給量を減少させること」
  4. 通貨供給量増加率が増大されてからインフレが発生するまでにはタイムラグがある.何ヶ月ではなく,何年単位で.同様にインフレ克服にも時間がかかる
  5. インフレ克服課程で発生する不愉快な副作用(高失業率,低成長)は不可避.

「インフレか失業か」ではない.インフレを許容してさらなる高失業率に突入するか, インフレ治療過程として一時的な高失業率に耐えるか,である.

10章: 流れは変わり始めた

巨大な政府から小さな政府へ.

知的風潮の重要性.インドと日本の対称的な例.

1868年,明治時代の指導者たちは自国の国力と栄光を強化することに献身,個人的な自由や政治的自由には価値をおかず,貴族制度やエリートによる政治統治を信奉していた. 一方でインドは政治的自由・個人的自由・民主主義を熱烈に支持.国力を増大するだけなく一般大衆の経済状況改善に力を入れた.

日本はアダム・スミスの政策,インドはハロルド・ラスキの政策を採用したことになる.

政府の独占役割を民間が果たし始める流れ.