『武器としての交渉思考』瀧本哲史
- 作者: 瀧本哲史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/06/26
- メディア: 新書
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20150331開始,同日読了
ガイダンス
- 近年の変化: 王様と家来モデルの崩壊
ほんとに社会に影響をあたえるためには"エスタブリッシュメント層"の支持が必要.権力とカネもってるオッサン.
人間は自由であるために拘束される.
拘束は合意に基づかねばならず,合意を創りだすのが「交渉」
2人以上の人間が集まれば交渉の必要が出てくる
1時間目: ロマンとソロバン
- 資本主義社会ではカネが十分あるかないかで「自由の範囲」がかなり変わってくる
孟子曰く「恒産なければ恒心なし」...経済的な安定がなければ精神的にも安定しないという意味
お金儲け = 資本主義社会において「人々に支持されている」かどうかの指標
今後残っていくのは「交渉」を含む事業.コンピュータに出来ないのが「交渉」である.
ひとは具体的なメリットが実感できて初めてお金を払う.
- × 面白いことをやってればお金はあとから付いてくる
◯ 客が儲かればお金はあとから付いてくる (Client interest first, money follows) ;; interestなんだ
ロマンとソロバンの両方を考える
- 若いうちはソロバンの方を優先
2時間目: 相手の利害に焦点を当てる
- 僕が可哀想だからどうにかして!ではなく「あなたがこうすると得しますよね」と語る
- 相手の主張をなるべくたくさん聞いたほうが勝ち
- 交渉のポイントは意見を通すところではなく利害の調整.
3時間目: バトナ
BATNA: Best Alternative to a Negotiated Agreement
- いま目の前で進んでいる交渉に「合意しない」という選択肢
- ちゃぶ台を返す方が自分の有利になるという選択肢.これを意識することでだいぶ視野が広がる
「私はあなたと合意しなくても別の良い選択肢があるので,それより良い条件でないと合意しない」と言える
例: 5,6月あたりに家を探すのがベターなのは,そこで借り手を見つけられない時次のピーク時1-3月まで空き部屋になるという大家の懸念を突くから.
交渉の心理的ハードルを下げる考え方「自分は代理人である」という意識.自分のことだとは思わずになるべく有利な条件を引き出す役割の人間だ,と考える.
;; 個人的にこれ意識するとかなり改善されそう
4時間目: アンカリングと譲歩
アンカリング: 条件(極端なもの)をぶつけることで相手の選択肢を縛る.いやいや50万は出せねーけどまぁ5万なら...みたいに本来出さなくてもいいものに合意してしまう
自分が使うときは交渉のスタート地点を有利にするために.
- 相手に使われた可能性を考慮して「そもそも相手の言う条件設定おかしくね?」と自問する習慣.
アンカリング食らうのを避けるため,最初に相手に言われた条件は一切無視くらいの気持ちで.
めんどくさいやりとりを続けることで相手との間に「仲間意識」を芽生えさせる
共同作業(内容は問わない)で「仲間意識」を以下略.顔つき合わせて稟議書一緒に作りましょうかみたいな
無条件の譲歩はしない.必ず見返りをgetする
実際の交渉においては複数の合意ポイントが絡まってくるのが普通.絶対譲れないのか妥協してもいいのかという優先度をつけておく.
相手が自分の優先度を誤解してたらそれを突く.休み増やして欲しいんだけど相手は「給料上げて欲しいんだろ」と思っていれば「給料上がらないんすか...じゃあ仕方ない,代わりに休み増えません?」ともっていくとか
POINT1: 気まずくても沈黙に耐える.その場を収めるために不要な妥協をしてしまわないためにも.譲歩の引き合い合戦になったとき先に折れない.
- POINT2: 情報を出さない事自体を交渉の材料にする.リップルウッドの新生銀行買収は政府が不良債権詳細を出したくない点をうまくつかって超有利な価格/条件で買った.
5時間目: 非合理的な人間との交渉
- 合理的でない相手との交渉では,相手の価値観に合わせる
- 相手の価値観は変えられない.
- 相手の分析が最重要(これは非合理相手にかぎらず今まで見てきた合理的交渉でも同じ)
- ランク主義には高ランクの人材をメンバーに加えて対応.
- もしくは「見どころがあるワカモノだ」と思わせる
6時間目: 自分自身の宿題をやろう
- 交渉は断れれてからが勝負
- 交渉が頓挫したように見えても相手の「できない」を具体的行動で潰していけばよい
- 同期の若手と愚痴るのではなく何かの行動を伴う「秘密結社」を作ってみることでそっから変えていこーみたいな
雑感
「交渉」を主軸においている.それは別にかりそめの看板というわけではなく,著者は法学部で交渉に関する研究をしてたこともあり結構本格的な主題. しかし最終的な主張の方向はワカモノがんばろう,変えていこうみたいな意識高い感じ.嫌いではない.