『アメーバ経営』稲盛和夫
- 作者: 稲盛和夫
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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20150418開始,同日読了
工学部卒業後京都のメーカーに就職,ニューセラミックの事業化.その後上司と意見が合わず7人の仲間と独立.
私は,技術者としての夢を実現するために会社を起こしたのだが,いざ会社を創業してみると,社員は自分の一生を託して入社してくる.だから,会社には,私の夢の実現以上に大切な目的がある.その目的とは,従業員やその家族の生活を守り,その幸せを目指すことなのだ.(p.26)
300人を超えた頃アメーバ経営を始める.目的は3つ.
- 市場に直結した部門別採算制度
- 経営者意識を持つ人材の育成
全員参加経営の実現
アメーバリーダーが経営者としてチームを率いる
- 小規模集団の独立採算制
- 専門知識を持たなくてもわかる「時間あたり採算表」を導入
アメーバ経営はただのメソッドではないのでやりかただけ真似してもうまくいかない,談.
経営判断は「人間としてそれが正しいかどうか」
売り上げを最大に,経費を最小に.あたりまえすぎるが経営の真髄である,と.
;; むしろ別の考え方として何があるのか? と思ったが,たとえば業種平均の利益率と比べて1%よかった,みたいな考え方が仮想敵らしい.
値決めは経営...安易な値上げをしない.
1時間あたりの付加価値を計算.
- 従業員として「してもらう」立場からリーダーとして「してあげる」立場への視点の変化,これが経営者意識の始まり
- 一定時間働けば一定の報酬がもらえる => メンバーの報酬を払うために自らが稼ぐ,という意識変化
戦後の一時期労働争議が頻発.猫も杓子も労働者 vs 資本家という対立構造.
事業として成り立つ単位をどう決めるか.ただ細かくすればいいってわけじゃない.基準は以下.
- 明確な収入が存在し,かつ,その収入を得るために要した費用を算出できること
- アメーバ単位でビジネスが完結すること(独立した事業になっていること)
- ;; けっこう諸刃の剣な気がするな.会社本体への帰属意識がないままビジネス単位を切り出してしまうとそこがスピンアウト独立しかねないよね
- 会社全体の目的,方針を遂行できるように分割する
- カニバらないようにする.
アメーバ経営者の立場を超えて会社の利益を考えるようにするには? => フィロソフィを備えよう,とな.具体的には人間として正しいこと云々のアレ
;; ずいぶん根が素直じゃないと働けない会社っぽい
成果主義と人間の心理.
業績はつねに上がるわけではなく,必ず落ちるときがくる.人の心というのは不思議なもので,業績があがり,高い報酬をもらっていると,ついついそれに慣れてしまうものである.(中略)みんなの士気は一気に下がり,会社に対する不満が鬱積することになる.(p.89)
特に日本人は横並びの中流意識が強いため (;; 安直な一般化だけど) 欧米流のストレートな成果主義は向いてない
先端技術や特許は決定的なアドバンテージにならない.技術的にさほど優れていなくても,どこでもやれる事業を優れた事業にすることが大切.
リーダーには,若干経験不足でも若い人材を抜擢
アメーバ経営とは稲盛氏が作った経営管理システムであり,経営管理部門はそれを維持・管理・発展させる部門でたいへん重要.
社内ルールを創る際の指針
- 経営の実態をありのままに伝える
- 一貫性がある
- 会社に公平である
よくある標準原価方式では,前期の原価を基準にこれより1割下げようみたいな目的を決める.だがこのやりかたでは目的を達成するとそれでヨシとなってしまいとなってしまい自ら利益を生み出す意識にならない
報告を受けなくても時間あたり採算表がすべて実態を教えてくれる(現場に頻繁に足を運んでいたのもあり).
時間あたり採算表は(その名の通り)すべての項目を時間あたりに割って算出している. 時間あたり採算表の項目は普通の決算書の勘定項目より細かい.額の大きいやつは適宜分解するため.
アメーバの評価は絶対金額ではなく,各アメーバが創意工夫により数字をいかに伸ばしたか,を重視
営業部門と製造部門がそれぞれ別々のプロフィットセンター.製造部門は顧客への売上代わりに「社内売上」と社外への直接出荷の和を使う.実際はもうちょい複雑っぽい.p180あたり「収入の捉え方」参照
;; 研究部門はどうしてるんだろ.組織図みるとあるらしいけど
規模が小さい頃から月次決算.当時は珍しい.さらに月末で締めてから1週間以内に月次の損益が出てくるのは驚異的だった.
"近代の会計"は発生主義で,お金の受け取り/支払い時期と計上時期が異なる.京セラではそうではなくキャッシュベースで.在庫はなるべく持たない"当座買い"でピークを抑えたりキャッシュに近い動きをするようなしくみ.
創業期,受注生産形式.要求仕様に合わせて製品を作る.
個々のアメーバの経営と全体の繁栄が矛盾してはならない(このへんはなんか仕組みがあるわけじゃなく気合なのね)