『淵の王』舞城王太郎
- 作者: 舞城王太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/05/29
- メディア: 単行本
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20150907開始,同日読了
さあもう立ちなさい、と私が思う前に、あなたは立ち上がる。あなたも聡明で、頑張っている。
私は見ている。
- p52
でも完全に失われる前に,私が私であった証みたいにして,一つ感情が残る.
悔しい.
あなたとここで別れるのが悔しい.
あなたを含んでいるという理由で,私はこの世界が好きだった.
あなたのことが好きだったのだ.
それを,そもそも無理だったとしても,伝えることができずにこうやって無くなっていくのが悔しい.
だってどんな愛情だって,伝えられないこと以上の不幸ってないでしょう?
- p84
さて俺も立派にならなくてはならない。
俺の立派とは何なのかという問題は、……まあ俺が解決するしかない。
- p88
俺が思うに、経験に基づかない計画なんて単なる理想だ。
- p89
経験値の通じない物事ってのは世界にたくさんあるし、読書もその一つということだ。読んでるのは天才たちの仕事で、他にないから残っているのだ。新しいことづくめの体験で、経験が役に立つはずもない。
- p89
俺は君を食べるし、食べたし、今も食べてるよ
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俺は君を守るために明るい方向を向いてまともなことを考えなくてはならない。
- p167
ああ、終わったのだ。
これから終わることだが、終わっているし、ずっと終わり続けるのだ。
きっとずっと前から終わったことでもあるんだろう。
時間は関係ないことだ。
- p179
負けず嫌いだった君が、この訳の分からない奴に負けたなんてことにはさせない。
俺が君を引き継ぐ。やってやる。
- p181
「旦那様が他の女の子を救いにいっちゃうなんて言語道断だよ。その力は私と私の家庭に注いで欲しいんだ。結婚するんだったらね」
「……それが普通だよね」
「それが普通だよ」
- p228
「斉藤は新しい場所で新しい関係を築く。俺はここでやりたいこととやらなきゃいないことがある。もう三十なんだから、そういうズレが致命的になるよ、きっと」
- p256
「大事なことは、何でも、ここで今だよ」
- p305
あんたを集める。僅かな欠片も残さずに。
そして全部抱きしめる。
まとめて抱え、私はあんたとともに光の中を行く。
出口へ。
- p312