『タンパク質とからだ』
2017/01 発行でちょうど興味のある領域だったので読んでみたところ, 自身が最近のキャッチアップできていないというのもあるが, タンパク質の基礎からプロテオミクスの最新研究をわかりやすく紹介していて学ぶことが多く楽しめる.
タンパク質とからだ - 基礎から病気の予防・治療まで (中公新書)
- 作者: 平野久
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/01/17
- メディア: 新書
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20170530 開始, 20170605 読了.
- タンパク質はからだの 20% を占める
- 水分が 60-70% であることを考えるとそれに次いで多い
- ヒトのタンパク質は 2 万種類程度 … と推測されていたが, 実際はもっと多い
アミノ酸は 500 種類地球上にある. ヒトの体内にあるのは100種類程度だがメインは20種類
タンパク質の寿命は N 末端アミノ酸の種類によってきまる
- …かと思われたが, これは調査した β ガラクトシダーゼだけの話だったらしい
タンパク質の分解酵素, プロテアソーム
- ユビキチンが付与されたものだけを分解する
もうひとつの分解屋, リソソーム. 真核細胞のなかの細胞内小器官.
オートファジーは細胞内小器官や病原体などを含めて細胞内の成分を分解するプロセス
- まずタンパク質の作用で細胞内に膜が形成される. 膜が閉じてオートファゴソームという脂質二重膜ができる
- これがリソソームと融合して一重膜のオートリソソームとなる
大隈さんが画期的な研究を行い 2016 年にはノーベル医学生理学賞を受賞
ORF の数から「少なくとも」のタンパク質コード遺伝子数がわかる
- で, 選択的スプライシングによってそれ以上の数のタンパク質ができるよと
- あとはアミノ酸修飾がなされたりする.
結果, 実際の数はわからん. いくつかの推定研究がある
質量分析装置
- タンパク質をイオン化して質量を測定
- イオン化するにはレーザーをあてたり強い電場のなかに置くとよい. 電子やプロトンが脱離したり付加されたりする
- ソフトイオン化法, つまり試料分子を分解させずに気体イオンにするマトリックス支援レーザー脱離イオン化 (MALDI) と, エレクトロスプレーイオン化法 ESI がよく使われる
飛行時間型質量分析計 TOF MS
- ;; 学部生時代の卒論で使った
タンパク質の局在解析
2010 年 ヒトプロテオームプロジェクト発足. HUPO が立ち上げ
基盤となる技術は以下 3 点
Edhard, 2015 によるタンパク質の動態まとめ
- 1: 数多くのフォームをとる。遺伝子から選択的スプライシング、翻訳後就職を受けてプロテオフォーム 100,000 以上
- 2: 存在量そのものと種類の豊富さが部位によって異なる。
- 3: 細胞・組織によって発現が異なる
- 4: 部位によって活性が異なる
- 5: 発現時期によって活性が異なる
- 6: 相互作用によって活性が異なる
A.パンディーのグループと B.クィスターのグループがプロテオームのドラフトマップを作成, 2014 年ネイチャーに発表.
- ともに M.マンの下でバイオインフォ技術を身につけたとのこと
たとえばクィスターらは 多数の培養細胞を用いてショットガン分析法でタンパク質の発現を調べた
- 発現のマッピングに成功したタンパク質は 18097 個. SwissProt にある全タンパク質の 92% に上る網羅的な研究 ;; ヒトだけの計算?
問題もある. パンディーらは 2500 万のペプチド質量スペクトルを得ているが, そのうち 1600 万がどのタンパク質由来か特定できてない
この研究によって新規 ORF も数百個見つかっている
クィスターらの成果 ProteomicsDB
- 個別エントリ例: https://www.proteomicsdb.org/proteomicsdb/#human/proteinDetails/80458/summary
- ;; 比較. PDB 自分の知ってるのと結構変わってる http://www.rcsb.org/pdb/explore/explore.do?structureId=2LV6
一方 The Human Protein Atlas というのもある. 2015
注7) ヒトプロテオームドラフトマップ
(1) Kim MS, et al., A draft map of the human proteome, Nature, 2014 May 29;509(7502):575-81.
ヒトプロテオーム網羅的な解析で 80-90% のタンパク質の発現を確認できたので, 次は, 遺伝子があるはずなのに発現が確認できない 10-20% のタンパク質の発現状態を確認する必要がある
Uniprot (エントリ例には “Status: Reviewed - Annotation score: ooooo Experimental evidence at protein level” みたいな記述がありそのタンパク質の存在根拠ごとにレベル分けされている
Uhlen 2015, という論文は↓かな. これの成果物が先述の Protein Atlas www.proteinatlas.org
- Proteomics. Tissue-based map of the human proteome. - PubMed - NCBI
Tissue-based map of the human proteome | Science
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機能は複数あり得るが, 少なくともひとつの機能が明らかになっているタンパク質は 60% ほど.
バイオマーカー: 病期の進行や治療の効果を客観的に評価できる指標. 血液中のタンパク質, 心電図, 血圧, PET 画像など. プロテオーム研究によってバイオマーカーとしてのタンパク質が着目