『「標準模型」の宇宙 現代物理の金字塔を楽しむ』

2023-03-09 開始
2023-03-10 読了

原題 Deep Down Things - The Breathtaking Beauty of Particle Physics

原著の出版は 2004 年。

目次からざっくりテーマを。
自然界の力。相対論と量子論の結婚。リー群。対称性。ゲージ理論。ヒッグスボゾン。
本書は素粒子物理学標準模型、科学者たちがここ50年で明らかにしてきた自然界の姿に関する本。
高等数学の抽象概念が物理世界に関係を持っている。
4つの力。重力、電磁気力、強い核力、弱い核力。
どれが独立で根底的なチカらなのか?まだわかっていない。
現在、電磁気力と弱い核力は「電弱力」という一つの統合された力であることがわかっている。
重力は強くない。日常生活で感じる重力は、地球という巨大な質量があってようやく「これ」である。人間同士の間には重力が働いているが、とても感じ取れない。
重力の及ぶ範囲は電磁気力と同じ。距離の二乗に反比例する。
強い核力(または強い力)は、陽子と中性子をつなぎとめて原子核を作っている力。

すべてのクォークは基本粒子であるが、
すべての基本粒子がクォークであるわけではない。
レプトンと呼ばれる基本粒子はクォーク℃違ってカラーチャージは中性。

弱い核力(または弱い力)は、4種の力の中で1番はっきりしない。不安定な原子核が電子とニュートリノを放出する、β崩壊と呼ばれる過程が起こるのは弱い力のせい。
入力は弱い力をもってのみ他の物体と相互作用するが、そのニュートリノは地球を完全にすり抜けるほど。弱い力はそれほどに弱い。
現代物理学の最初の革命はアインシュタイン相対性理論
ド・ブロイ。波と粒子の二重性。
すべての物体は波としての性質を示し、その際の波長は物体の運動量に反比例する
ハイゼンベルグ不確定性原理。これにより決定論派正当化できなくなった。出来事の精確な道筋は本質的に知ることができない
不確定性原理のもう一つの帰結は、観測する側とされる側の違いが失われる、ということ。観測するには何かと相互作用しなければならない。その相互作用は必ず何らかの影響を与える

ネーターの定理「ある物理法則が示すすべての対称性には、保存する観測可能な物理量が存在する」
ハイゼンベルグの導入した核アイソスピン。内部空間という概念の広がり
電子スビンとは別物。
内部対称性空間はすうがくてきこうせいぶつ。
ゲージ理論標準模型という形式の一部
そしてゲージ理論標準模型の基礎をなすものでもある

ゲージ理論繰り込み
繰り込み。電子を観測するとき、裸の電子を観測しているのではなく、真空の無数のゆらぎを予め取り込んでいるものと考える。
実験室で観測する電子の電荷には、電子と真空の取り巻きをすべて合わせたものであると考える。

量子論は「強い核力」の既述に成功した

波動関数が位相の変化(より一般的には何らかの内部対称性空間における回転)に対して不変であるという概念と、自然な形の因果関係(相互作用)を具体的に記述する項を波動方程式の中に取り入れるという考え方 ― この二つの概念のつながりが私たちがゲージ理論と呼んできたものである。
物理的な相互作用法則が働いた現象や関与した現象について、その背景にある根本的描像をゲージ理論の視点で描き出すには、考えるべき問題が二つある。一つは自然界の物体の波動関数がもつ位相変化に対する不変性の特徴(すなわち根底にある対称群)であり、もう一つはその不変性と関連したチャージの性質と強さである。
さまざまな内部対称性空間の構造を決めるすべてのリー群と、これに関連したチャージの性質と強さがわかれば、物質のふるまいの基本ルールが完全に記述される。(p.374)

ワインバーグらが作り上げたグラショウ・サラム・ワインバーグモデルは、電磁気力と弱い核力を統一的かつ正確に記述することに成功。ワインバーグらは1979年にノーベル物理学賞を受賞。

ゲージ理論は、いまのところ知の発展の軌跡の終着点に位置する。ゲージ理論はあらゆる形態の物理的因果関係(ただし重力を除く)に関する理解を統一的に説明する手段を与えた。つまり、
1. 根底にある三つの内部対称群のいずれかを選び、
2. その群に関連した三つのカップリングパラメータ(チャージの大きさ(電荷・弱アイソスピン・カラーチャージ))を経験的に決定する

ただ、ゲージ理論だけでは質力を考慮できていない。そこでヒッグス場を導入する。
ヒッグス場は質量のためだけに導入された。理論の健全性には必要だったが、ゲージ理論の簡潔さを犠牲にしている面もある。場当たり的に導入されたと言っても良い。

;; 著者はヒッグス場に懐疑的? いやそういうワケでもないか. 執筆時点での最前線なので「この先何が出てくるか」というニュアンスで書いてる
;; ヒッグス粒子は 2011 年以降に実験でも観測された
;; ヒッグス粒子は神の粒子とも呼ばれるがあまり科学者はこの呼称を好んでいない。goddamn particle (いまいましい粒子) と呼びたかったが編集者の意向で god particle になったとか