『生物学のすすめ』ジョン・メイナード=スミス

原著は 1986 年, 日本語版文庫としては 2016 年発行

生きものの特徴は二つある:

  • 代謝 ... 生物の形は一定に保たれているが,それを形作る元素や分子は絶えず入れ替わっている
  • 機能 ... 生物の身体の各部分は働き/機能を持っている

進化論は,カール・ポパーのいう意味で反証可能な科学理論ではない.

生命の本質は「カエルの子はカエル」

遺伝学の発展 4 段階:

  • ワイスマンによる生殖質と体質の独立の概念
    • 体細胞と生殖細胞に別れるという考え.身体は死ぬが生殖系列は基本的に不死
  • 1900 年メンデルの法則再発見にもとづく遺伝の原子説の確立
  • モーガンらのショウジョウバエ研究による染色体理論
  • 1953 年ワトソン・クリックによる DNA 構造決定,そのあとに始まる分子遺伝学

メンデルはエンドウの特徴の中で「二つにはっきり分かれて中間形のないものだけに着目する」という優れた判断をした

遺伝機構の一般的な特徴三つ:

  • 遺伝はデジタルな現象である
  • 遺伝では表現型と遺伝子型が区別されている
  • 遺伝は量子レベルのできごとを巨視的なできごとへと増幅する

性と生殖は正反対.生殖では一つの細胞が二つになるが,性の基本的な過程は二つの細胞が一つになること 組換えの期限はなんだろうか.スミスの仮説は,組換えはもともと壊れた核酸を修理する一つの方法として使われていた ;; ニコイチみたいな 現在真核生物において組換えは近縁な種の間でしか起こらない

サミュエル・バトラー「ニワトリは単に,卵が次の卵を作るための手段である」

これの現代的な表現がドーキンスの『利己的な遺伝子

p.71, 性には二倍のコストがかかるという話 ... Fibonacchi のウサギの話

進化論の諸問題とそれへの回答:

  • 時間は十分だったのか?
    • => Yes. ヒトの塩基対 109 のうち反復考えて特定すべきは 108, 1 塩基固定するのに 10 世代かかると仮定すると 10 * 108 = 109 世代あればよく,生命誕生から今日までの 3 * 109 年あれば十分以上.という説明
  • すべての変化は適応的か?
    • => 木村資生の中立変異.形態的進化は適応的だが,分子レベルでは中立
  • 進化は常に向上といえるか?
    • 「群」適応はあるか?

p.105, 生物学者が「X のための遺伝子」と言う表現をするとき,それは暗黙の前提というか背景が省略されている表現.

もしこの本の中で,生物学の未解決の問題だけを扱うことにしたら,内容の 90% は行動と発生に費やされることになるでしょう

-- p.128

「ものが見える」ということ,を例にして神経系

p.182, 発生における卵の中での物質の偏り - チューリングのモデルとジャボチンスキー反応.化合物同士が液体の中で拡散する際に反応を起こすような場合,均一に分散するとは限らない

私は生命を二つの見方,すなわち散逸構造として,また遺伝の情報を伝達できるものとして見ることを進めるところから出発しました.タンパク質とそれによって触媒される化学反応は散逸構造の維持に必要なエネルギーの流れを引き起こします.核酸での正確な塩基対合は遺伝の基本です.生命の二つの側面は遺伝暗号によって一つにつながっているのです

-- p.217