『ソウルダスト―〈意識〉という魅惑の幻想』ニコラス・ハンフリー

2022-07-07 開始
2022-07-09 読了

意識は脳内のマジックショー
ニコラス・ハンフリーの 2011 年の著作


著者の前著『赤を見る』の最後数ページを出発点としている
あれ?『赤を見る』読んだと思ったけど記録にないな…

目が覚めるということ。センシェンス(感覚を意識すること)。物質がどうして意識ある心の状態を経験しうるのか。

簡単な terminology
著者が言う意識は「現象的意識」
主体に「現象的意識がある」とは、その主体であるとは何かのようなことである、という何かがその瞬間に存在すること
クオリアは感覚の特徴
クオリアという感覚の特徴を「持つもの」として感覚を経験することは、それに相当する心的表象を形成することである
心の状態としての意識は、そのような心的表象を抱いている認知的状態

意識経験は第三者からどの程度観察可能なのか
意識が自然淘汰で残った以上、必ずま何らかの外界への影響があった

あなたは、主体が意識経験だと思うもの、すなわち意識経験から主体が作り出す心的表象とは別個に、何か意識経験の実体というものが存在するという、魅惑的な考えの罠にはまってしまったのだ。だが、その考えは間違っている。(p.33)

1974年のトマス・ネーゲルの有名な論文『コウモリであるとはどのようなことか』
プサンドラム…自己を表すラテン語の ipse と、難問を表す「コナンドラム」を組み合わせた造語
感覚刺激に対する反応として誕生し、幻想を生み出す仮定上の内定創造物をイプサンドラムと呼ぶことにする。

意識はあなたが自分のために用意した、ミステリアスなマジックショーだ。あなたは感覚的インプットに反応して、個人的反応として、イプサンドラムという一見すると別世界のものを創り出す。そしてそれをあなたの中の劇場で、自分自身に提示する。(p.57)

これでひと仕事みたいな雰囲気出してるが、いやイプサンドラムは結局何なの?謎を別の造語に閉じ込めて解明されたような空気出されても困る
ダニエル・デネットらはこの種の「カルテジアン劇場(デカルトの劇場)」派の意見を批判している。脳の一部が世界の複製を生み出して脳の別の場所がそれを見る、という構造では、問題が再帰的に後退するだけ

著者のハンフリーは、いや劇場の役目は複製じゃない、として反論してるが、世界の複製だろうが世界の何らかの写像だろうが話は同じだと思う。うーん僕はデネットの言ってることの方がまっとうに思うなぁ

著者自身もこの先理由付けを進めていくと言ってるので読みすすめる


感覚とは本質的に、体に触れる環境刺激との相互作用を表彰する方法
表象
感覚 != 知覚
知覚は、体の外にある客観的世界の表象
あなたの行動を外から読み取れるなら、それ以上の情報を中で読み取ることもできる。遠心性コピー。
パケットミラーリングみたいだな
自身の脳からの指令信号をモニターする機能から始まり、進化。

センティションは著者の造語

感覚はあなたの心によってモニターされるものとしてのセンティション(= 私秘化した表現活動)

動物のように、外界刺激は何らかの反応をもたらす。だが、その反応は仮想の体の上で起こる。仮想の体で起こる反応は内在化されている。
トマトの赤は赤という刺激で仮想の体に反応、神経レベルでの活動を引き起こす。これは自動的な反応で、それをモニターすると感覚が得られる
赤い光に対する目での反応を「赤すること(redding)」などと読んでいる
すべて行動、反応ベースで、感覚として存在するのはそれをモニターするときだと

しかし、感覚反応のモニタリングはそれ自体で意識を生み出すわけではない。
今日でも感覚をモニターしているが意識のない状態にある生物が大多数なのだろう、と
センティションは(まだ)イプサンドラムという奇妙なものになっていない

ではどのように意識が現れたのか?
フィードバックループが、フィードバック自体の刺激をくるくると再帰的に回り始める。回路を一周したときに前の回とは微妙に異なる。遅延微分方程式、すなわちある時点における系の発展がそれより前の時点における系の状態に依存する。
アトラクター状態が起こりうる。微妙に変わってゆくループが長い回週を経てもとに戻る。高次元から見るとパターンを描く。

時間と感覚。
感覚経験は時間的にある程度の長さ続いているように感じる。これはアリストテレスの時代から言われていた

さて、意識とは何か、を一旦おいて、
次は、意識の目的は何か、を考える
意識ある生き物が哲学的ゾンビ心理的ゾンビ)よりどう優れているのか
意識の発達史をみると、意識のメリットは以下。
・意識ある生き物は現象的意識を持つことを楽しむ
・現象的意識を持って生きている世界を楽しむ
・現象的意識を持っている自己を楽しむ
つまり、生きる喜びが付与され、世界を魅力に思い、形而上の自身の重要性を感じ取ることができる。

;; そう表現すると確かに平均して自然淘汰を生き延びるのに寄与しそうね
でも、存在したいという意思、存在することの喜びは、プログラムされた本能と比べて何が得なのか?生物は皆生きるためのプログラムに従って行動しているではないか、と。
また、散歩に連れて行って欲しい犬も、あたかも喜びを感じているようではないか

逆の視点で見れば個人としての死、自己の消滅を恐れる

もし、死を恐れるのが本当に人間ならではの特質で、意識を持つことの結果の一つであり、人間が生き続けるのを助けるのなら、意識――中核的意識――は、他のどんな動物の生物学的適応度よりも、人間の生物学的適応度に貢献することになる。(p.130)

んー、プログラム行動との差別化論証されたっけ?


アーメルとラマチャンドランの実験。本物の手を隠してゴム製の手を目の前に置き、研究者がゴム製の手と本物の手を同時にたたいたりなでたりする。すると、ゴム製の手のある場所で「触覚的な感覚」が起こったように感じる。
それどころか、ゴム手の代わりにテーブルの上の一点を叩いて見せると、テーブルの上の一点で感覚が起こっているように感じる

中核的自己。あなたであるという経験は、他の誰も経験することができない、他に例を見ない孤独。
詩人による人間と世界の讃歌を紹介


魂という言葉の重さをわかっていて、そのうえであえて使うのだ、と著者は言う。だんだん書籍のページを捲るに従って魂という言葉が出現する頻度が上がってきた
;; まぁそれもあって, これ科学書ではない感じするな. 科学の皮をかぶり哲学で色付けしたポエム


スペインで1万5000年前の遺跡に人形で頭がぐるぐるした絵が発見された。それが著者の言う感覚の私秘化の概念図に似ているだろう、と。うーん?


死によって不意に自分の命が断ち切られることを知っている人間の戦略、つまり意識を持つことによる生存メリットの別の側面は次のようにも表現できる

  • 未来を割り引いて考える。現在のために生きる。
  • 非個人化する。自分の死後も残る文化的存在と一体化する。
  • 肉体の死が最終的であることを否定する。個人の自己は不滅だと信じる。

『ビューティフル・マインド: 天才数学者の絶望と奇跡』

2022-06-22 開始
2022-07-03 読了

ナッシュ均衡で有名な数学者、ナッシュの話
映画にもなってるっぽい
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%8A%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5

ナッシュは20歳ごろから10年のあいだ天才として知られるが、30歳の頃に統合失調症を発症、妄想に取り憑かれる。
アインシュタインやらと近い位置にいたが誰の教えも受けなかった。直感派の天才。
ゲーム理論ノイマンが始めたものだがそれを洗練させたのがナッシュ
ナッシュの人生は、天才、狂気、そして再生

ナッシュは1928年生まれ
両親の結婚から追いかけてる、先は長い
数学に関心を持つ家庭的要因はない。母は文学、父は科学に関心があったが純粋数学はそうでもなかった
まわりに合わせず友達を作らず、しかし頭がよく、だが空気を読まず喋りたいことを独演会する子供だった
ナッシュは学校で教えられたものとは別のやり方を自分で作ることを好み、学校教育としばしば噛み合わなかった
紙とペンを使わない、すべてを脳内で完了する
SAT が普及する前は、大学の新入生係があちこちの高校に行って大学の入学試験を受けるように勧誘して回っていた。
高校最終学年でようやく二人ほど友人ができる

終戦あたりでカーネギー工科大学に入学
技術専門大学から総合大学に変化したタイミング
大学の化学の授業を、"いかによく考えるかではなく、いかに巧みにピペットを使い、いかにみごとに溶液を垂らすかに過ぎない" と語る
体が大きく腕力もあったため肉体的にいじめられはしなかったが変わり者と思われた

バトナム数学競技会。超難問が30分で12問、120点満点。得点の中央値は0点、つまり半数以上は1問も解けない。これで好成績を収めると数学者としての未来は確約されたようなもの
だがナッシュは上位5位に入れず、この失望を割と後々まで引きずった
ああちがった、バトナムじゃなくてパトナム (Putnam) だ

学部カーネギーで過ごし、ハーバードとプリンストンから院の誘いを受ける。ハーバードのブランドに惹かれていたがプリンストンからより熱心に(奨学金額、待遇、数学科の長からの直々の手紙)誘われたためそちらへ。

アインシュタイン
1905年、特殊相対性理論「質量とはエネルギーの凝縮であり、エネルギーとは解放された物質である」
1915年、一般相対性理論「重力は物質自体に備わる特性であり、物質の粒子に作用するとともに光にも作用する。言い換えれば、光は『直進』しない」

ヒルベルト・プログラム: 「数学のあらゆる分野にわたって公理化を行い、すべての問題を機械的に手順通りに解決する」ことを目指した野心的な取り組み
形式主義時代の到来
やがてヒルベルトたちは量子力学や生物物理学、論理学、ゲーム理論などに公理的アプローチを拡大した
だが、プリンストン大学はこの流れから取り残されていた
取り残されてたのは1910年代の話

そこからいろいろな人事の歴史がありなんだかんだで数学の総本山に
1933年あたり、富豪の寄付もあって国際的に一級の才能を引き抜こうと招待してアインシュタインが来る。それに先んじてフォン・ノイマンも来てた
ゲーデルヘルマン・ワイルも渡米

プリンストンの学生に対する姿勢は
・完全な放任主義
・独創性を求めるプレッシャー
のふたつ
成績は「俗物を安心させるためのもの」として適当につけられた

その時代ハーバードは役所的になり研究にいい場所ではなかった。ナッシュがプリンストンを選んだのは正解
ナッシュはほとんど本を読まなかった
クリップボードを持ち歩き、なにか思いついたらそれに記入していた

ナッシュの研究成果のいくつかは、聞きかじりや誰かに質問して得られた回答をもとに、自分流に再構成して生まれた
ナッシュはいつも思索にふけっていた
自身の知的独立を守ることに熱心で、教授の多くとは話さないようにしていた
だが自分の考えを代弁してくれるスティーンロッドにだけは接近していた
ナッシュの同期、ジョン・ミルナーは、講義で取り上げられたカロル・ボルスクの予想を宿題と勘違いして数日後教授に提出しに行ったりした
そういう輩の集まる環境

ナッシュは親近感を持たれるタイプの人間ではなかった
プリンストン大学では毎日 15時から茶会があり、学生と教授たちはほぼそこに参加していた
談話室では囲碁ボードゲームが人気で、ナッシュは自ら考案したゲームを持ち込む。大人気になった
実は同じゲームがピート・ハインによって考案されていた
https://bodoge.hoobby.net/games/hex
これ?
> ヘックスは先手必勝であることが考案者の一人ジョン・ナッシュによって証明されているものの、具体的な手順が示されているわけではないそうです
ナッシュも考案者扱いだ。てか先手必勝なの?
=> 本書中でナッシュもそう言ってる。ただ、先手が負けるのはミスをした場合だけだが、誰も完全な戦略が何かは読み取れないとのこと
上記サイトのレビューを見ると盤が狭いほど先手が有利かもという意見あり

フォン・ノイマンは現世的でエネルギッシュな人物。当時アインシュタインほど高みの人物ではなく、学生たちの良い手本
純水数学、物理学、統計学ゲーム理論、コンピュータの構想など広範囲に活躍
初期のコンピュータに計算問題「下から4桁目が7になる整数を得る、2の累乗の最小値は何か?」を出したときコンピュータよりも先にノイマンが答えを出した逸話がある

『ゲームの理論と経済行動』は大半ノイマンが書いた。
モルゲンシュテルンとの共著ということになってるが、モルゲンシュテルンは数学の素養がなかったので理論周りはぜんぶノイマン
前書き書いて世間を惹きつけたり、そもそもノイマンに声をかけたりしたのはモルゲンシュテルン
ノイマンとモルゲンシュテルンの主張は、従来の経済学は非科学的だ、ということ。
同書は、数学(とくに組み合わせ論集合論)を使って社会理論を再構築する試みであった
出版 1944年。ノイマンの名声は頂点に。

だがナッシュは『ゲームの理論と経済行動』はイマイチだと評価した。ミニマックス定理だけは見るところがあるがあとはそうでもないと。
二人ゼロサムゲームに紙幅の1/3を割いたがそれは現実の社会では妥当ではなく、
最後の方は非ゼロサムゲームを取り扱ってはいるが、過剰消費して赤字を生み出すという非現実的なプレイヤーを導入したために、事実上ゼロサムゲームになっている。
その欠陥を見てとって、ナッシュはゲーム理論の課題に取り組み始める。

交渉問題。
経済学の基礎である交換の概念。人類の歴史と同じくらい古い。

ナッシュは、交渉するふたりの人間が合理的であるなら、それぞれが相手にどのように働きかけるかを予測するという、まったく斬新なアプローチを試みた (p.216)

これは1920年代に数学界で流行した公理系アプローチというもの

ナッシュは、こんにち「ナッシュ均衡」と呼ばれるアイディアに至る。ミニマックス定理をより一般化したもの?
フォン・ノイマンに面会してそれを伝えるが、切り捨てられる。自身の主張に対立する理論。
ゲイル(ボードゲーム hex を一緒に作った友人)に話したら、理解してくれる。さらに世間に疎いナッシュに代わって、優先権を取得するために会報に掲載する段取りも付けてくれた。

ナッシュの(均衡)定理は、ともするとフォン・ノイマンの定理(ミニマックス定理)を普遍化しただけのもの、と考えられがちだ――ナッシュ自身がそのように述べているせいでもある――が、それは単なる拡大ではなく、まったく異質な発展であった。フォン・ノイマンの定理、いわゆる二人ゼロ和ゲーム理論は、完全に対立するふたりのプレイヤーによるゲームの考察を基礎に置いているが、この二人ゼロ和ゲーム理論は、実質的には現実社会に対してなんらの妥当性も持たない。戦争のただなかでさえ、必ずといっていいほど、協力によって得られる何かがある。ナッシュは、協力と非協力の相違を明確にした。協力ゲームは、プレイヤー同士が強制力を持つ合意のうえで行うゲームである。(中略)これとは逆に、非協力ゲームでは強制的な合意は成立しないため、共同的提携は不可能となる。協力と対立が混在するようなゲームへまで理論を拡大することで、ナッシュはゲーム理論を経済学、政治学社会学、さらに生物学にまで適合させる扉を開くことに成功したのである。(p.233)

フォン・ノイマンとモルゲンシュテルンの著書の大半は「協力理論」を扱っているが、これは必ずしもすべてのゲームで成立するとは限らない。
一方ナッシュは、論文の6ページ目で、さまざまなプレイヤーによる非協力ゲームは、すべて最低一つの均衡点を持つことを証明した

22歳のころ、ランド研究所コンサルタントとして初仕事に赴く。そこから4年間付かず離れずの付き合いをする。
朝鮮戦争が勃発し、ナッシュは徴兵を極端に恐れた。指導教官のタッカーらの助けもあり、既に国防に重要な役割を果たしているという申請を出して徴兵を免れた。その一環がランド研究所でのお仕事かな。26歳を越えて徴兵対象年齢から外れても徴兵の恐れは尾を引いていた。

23歳、MIT の講師として就職
ナッシュから見て MIT で最も魅力があったのはノーバート・ウィーナー。サイバネティックスの父。
それ以上の親しみを抱いたのはノーマン・レヴィンソン
講師として講義をしたが、早々に研究に集中する人として認められたため実際に講義したのはごくわずか。しかも多くは基礎的科目
古典的未解決問題をテストに出したりした。
一般学生からは忌避されていたが数学の才能のある学生とは対等に話して尊敬を集めていた

力を示すことに熱心で、まだ解かれていない重要な問題を探して多様体の問題に出くわした。

多様体に関するナッシュの定理は「滑らかさについて、ある条件を満たす曲面は、実際にユークリッド空間に埋め込むことが可能である」というもの。二年間執拗に取り組んで突破した
やがてナッシュはそれまで興味のなかった他人との関わりに踏み出す
あまり教養のない愛人と出会い子をもうける
が、父親になること、結婚することは拒否し、でもまだズルズル関係を続ける
男性とも関係を持つ。同性愛が犯罪とみなさていた時代。警察の同性愛おとり捜査に引っかかってランド研究所を離れる
若い女学生、アリシア?がナッシュに心酔する。この人がのちまでナッシュを支える妻になるんか?
物理の研究を夢見て MIT に入った数少ない女学生だったが、いい成績が取れず落ちぶれつつあった
1958年末から翌2月末までのあいだ、ナッシュは変貌した。明るくふざけ好きな行動に始まり、講義中に夢想したりぶつぶつ独り言を行ったり、自分は重大な任務がある、世界政府を樹立しなければなどと語るようになった
新聞の隅を指差して、ここには暗号でメッセージがあり、地球外の力が送ってきたものだと語る
数学会の講義、250人の聴衆の前で非論理的な数学のワードを散りばめただけのとりとめもないおしゃべりをして、皆がおかしいと気付く

当時はフロイト主義が幅を利かせており、精神疾患は抑圧された同性愛が原因だ、的な言説が信じられていた。実際ナッシュにその手の経験もあった

入院後、自身を拘束されてる政治犯と思い、異常を隠す。医師は疑いつつ退院を許可。プリンストン大学で数学者に囲まれた生活を再開するが、ヒゲと髪を伸ばし奇妙な行動を繰り返し、また入院

当時はインシュリン昏睡療法というものがあった。インシュリンを注射し、低血糖からの昏睡状態に。それを毎日行うという気の狂った手法
脳の栄養である糖を排除すれば余計な働きをする脳細胞は死滅するだろう、という発想らしい
だがナッシュはそれでなんかよくなった。流体の研究を再開したりゲーム理論の集会に出席したり(だが発言はせず)

統合失調症の自殺率は重度の鬱に匹敵する。自殺衝動は、治った、と告げられた直後が多い

ナッシュは創世記のエサウヤコブの話を自分に重ね合わせていた。というか同一視していた
統合失調症陰性症状(健康なときにあったものが失われること)は、妄想や幻覚(これは陽性症状、つまり健康な時はなかったものが現れる)よりも人を台無しにしてしまう
感情の鈍化、意欲低下、失論理などが陰性症状
田舎町で家族と過ごし、母が亡くなったあと、妹はたまりかねてナッシュをまた精神病院に入れ、退院後にナッシュはプリンストン大学へ戻る
大学内でうろつき黒板に訳のわからないものを書き続ける。大学生の間には噂が飛び交う。かつて数学の天才だったが「あちらの世界」に行ってしまった幽霊だ、と

ヒロナカヘイスケがフィールズ賞を(日本人で二人目に)受賞
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E4%B8%AD%E5%B9%B3%E7%A5%90
すると、ナッシュは黒板にそれにまつわるメッセージを書いた。内容は数学的に高度なもの
ナッシュなりのルールで読み取ったメッセージ(と思い込んだもの)を分析して計算して色々な意味付けをした。現実世界で意味を持つ内容ではなかったが、知的衰退からナッシュを守ってくれたものと思われる

離れて暮らしていた妻のアリシアがナッシュの孤独な状況をかわいそうに思い一緒に暮らすようになる。統合失調症に(いまでは)必要とされている、圧力をかけず優しく扱ったのが後の回復につながったのではと
アリシアとナッシュの息子、ジョン・チャールズ(愛称ジョニー)。ファーストネーム父と同じだし名付け文化謎
息子のジョン・チャールズも、父と同じく妄想に取り憑かれてしまった。統合失調症
兄ジョン・デイビッド
弟ジョン・チャールズ
弟のジョン・チャールズの方は統合失調症に悩まされながらも比較的安定しており、大学に入り数学の才能を発揮した
1990年頃、ナッシュの症状は寛解にむかっていた
コンピュータの使い方を学び、プログラムも書いた
統合失調症は治らないとされていて、ナッシュは稀な回復例
昔は例の馬鹿げたフロイト主義で説明されてたが、いま統合失調症は遺伝性と考えられている。実際にナッシュの次男が発症。

ナッシュ当人は1996年に「わたしは非理性的な思考の世界から、薬も何も使わず、時が経つにつれてごく自然に脱出した」と語っている
妄想に縛られた思考を自分自身で理性的に拒否するようになった。それはそれまでも自分の中で回してきた基準。無為でしかなかった政治的思想を退けて、解放が始まった

1994年、ナッシュがノーベル経済学賞を受賞
ノーベル賞の推薦・調査・通知などなどは秘密に守られている。委員会メンバーが過去の記録を参照できるのですら50年後
ノーベル経済学賞は、ノーベル賞設立から70年後に追加された。厳密にはノーベル賞ではなくスイスの銀行が出すものだが世間的には差はない
ノーベル経済学賞を与えるかどうかで議論。ノーベル賞は情報流出を防ぐために発表の直前に投票する
そもそもノーベル賞は本来経済学賞なんてものはなかった、追加したのは失敗だ、みたいなそもそも論議論も掘り返され紛糾

70歳になったナッシュは、40年に及ぶ狂気の世界から脱出して、再び研究に取り組む。
(本書出版時点ではまだ存命だったが)2015年に86歳で他界。

『アニメーションの本 動く絵を描く基礎知識と作画の実際』

2022-06-13 開始、同日読了

編集・執筆「アニメ6人の会」
今やレジェンド的な人々らしい

もくじ

  • アニメーションとはなにか
  • アニメーションができるまで
  • 運動の法則
  • 中割り
  • 遠近法
  • 動き: 人間、動物、自然

アニメーションとは、生命のないものが作者の意図によって生きているように動かされた映画またはその手法
animate は「...に生命を吹き込む、活動させる」という意味

  • セルアニメ = 透明なセルロイド板に動きをトレースして仕上げる
  • ペーパーアニメ = 作家が紙に書いた絵をそのまま投影した作品
  • 切り抜きアニメ = キャラクターを切り抜いて背景の上で置き換えながら撮影する。セルアニメ以前は全部これ
  • シネカリグラフィ = フィルムの1コマ1コマに手で絵を描いていく手法
  • 立体アニメ =物体を使う。人形アニメとか

;; ロトスコープとは、"実際に撮影した映像をトレースしてアニメーションを制作する手法"

アニメーションを現実そっくりにすることは不可能だし無意味
現実から開放された自由な表現にアニメーションの特性がある

アニメーションができるまで:
企画, シナリオ, 演出, 作画(原画・動画), 仕上げ, 美術, 撮影, 編集, アフレコ, ダビング, 初号

演出は絵コンテをもとにすすめる。今後の作業の設計図
仕上げとは紙に書かれた絵を透明なセルにトレースしていく手順。女性技術者が多い
撮影は1コマ1コマ撮影していく作業。

はじめと終わりの図があって、その間の動きを 3 枚で描いてみましょうという練習問題
運動の法則。慣性の法則。放物線。

誇張は、アニメーション表現の特徴的な技法。

運動には始めと終わりがある。静止した状態からの動き出し、そして止まるときは動きが緩やかになる。
均等割よりも、動きの両端に「つめ」たほうが自然
運動は全体が一度に動くのではなく、一部だけ先に動いたりする。これを描き分けるのが「のこし」

遠近法、パース、水平線。

アイレベル。目の高さ。視点をどこに置くか。どこからのカメラで描写するか。
パン。パンとはカメラの横移動。
近くに来るほど動きは速い。

まずは動きを観察して、1秒=24コマを頭に叩き込む。
ひと動作ごとの長さを測定する

多くのセルを重ねると明度・彩度が落ちる。3枚までがよいでしょう
;; 現代はその成約はなくなってる。押井守人狼は電車のシーンで10枚重ねた

クチのセルは昔は4-5枚作画してたけど、いまはだいたい3枚でやってる

アニメーションにおける「フォロー」は、カメラが固定されているので、
キャラクターを中央で動かして、背景を動きと逆の方向に引っぱる

人間の動きを前後左右、上下から見た図。
椅子から立ち上がるときの動作。立ち。歩き。走り。

自然現象。蛇口から水が滴る様子。水面に水滴が落下するはごろもフーズな絵。
波が伝わる様子。火の表現。煙。細部の動きが集約されて全体の動きになる。

自分の絵に固まってるひとはアニメーターに向いてない。どちらかといえば無色の方がよい。
プロになったら自然現象から動物植物、いろんな人物をいろんなスタイルで描いていかねばならない。

トレス台。下から光を当てる。
動画用紙はトレス台の上に4,5枚重ねてもいちばん下の絵が透ける程度のうす手。
タップとは、作画の際、重ね合わせた紙を固定する用具。タップ穴。サイズは世界共通。

その他用語

  • アイリス ... 撮影光量を調整。絞り。アイリスイン <=> アイリスアウトは「もうコリゴリだよ」で画面が丸になって徐々に消えてくやつ
  • コンティニュイティ ... Continuity。略してコンテ。アニメでは絵コンテという
  • パン ... Pan。パノラマの略。実写映画では(カメラマンが動かず)カメラを水平/垂直に回すことを言うが、アニメーションではカメラが固定なので被写体を動かして同じ効果を出す
  • フォロー ... Follow。横移動。カメラが走るひとや車の横につけてともに移動している効果。背景が動くけど車に乗った人物は真ん中に映り続けるやつ
  • ラッシュ ... Rush。ラッシュプリントのこと。撮影後最初に焼き付けた画だけのフィルム。これを試写して動きでおかしいところや色の間違いをチェックする。
  • ホールド ... 止め、とも。静止した状態を表すために同じ図形をいくつも撮影すること。

『WHO YOU ARE』ベン・ホロウィッツ

2022-06-10 開始
2022-06-12 読了

TEAMING とかエドモンソンの「解毒薬」として教えてもらったもの

著者のベン・ホロウィッツは起業家。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%AD%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%84
前著『HARD THINGS』の読書メモ: https://memerelics.hateblo.jp/entry/20191103/1572706800

ラウドクラウド(のちにオプスウェア)を経営、ヒューレット・パッカードに買収される
文化についての本、といえるか

著者が逆張り思考で調べたことの一つ、奴隷制度。
奴隷制度はどう考えてもひどすぎる、だが、かつて広く行われていた。だから現代の視点に逆張りしてみよう、奴隷制度を廃止するなんてとんでもない、という視点に立ったら何が見えるか?という思考実験
...という導入だったが歴史を語る感じの章だな。

ルーベルチュールという人物はハイチ独立の祖。
ハイチはフランスが奴隷を大量に送り込み、サトウキビやらでとっても収益性が高い島。当時はハイチという名前ではなかったが。
ルーベルチュールはフランス革命の流れを受けて奴隷反乱の指揮。
ふつう白人男性がやっていた馬の世話を任せられており、自由時間に本を読んで知識を蓄えた。教養があった。
反乱軍を率いて、スペインに付いたりフランスについたりして、英国軍を打ち破ったりもした。駆け引きがうまい。
残念ながら独立宣言したあとの交渉の最中、右腕に裏切られてフランスに収監され、数年で獄中死。
その右腕が独立の最後のまとめをやって国を「ハイチ」としてトップに座る。
が、ルーベルチュールはやらなかったであろう「フランスへの、というか農園経営者への復讐」を行った。これが尾を引いて、国家として承認されたものの多額の賠償金を被せられ、いまでもハイチは貧しい国のままでいる。

・うまくいってることを続ける
・ショッキングなルールを作る ...ショッキングなルールに対して哲学のある答えを用意する。何でそうなってるんだ?という新人の驚きに対して、何度も何度も説明が繰り返され、それが文化となる
・形から入る ...奴隷の反乱軍に制服を作って与えた。

ショッキングなルールの例。
ルーベルチュールの奴隷反乱軍では「妾は禁止」というルール。当たり前とされていたことの禁止。なぜ?という疑問に「最小単位の約束を守ることがう重要」という説明を行った。
また、初期のフェイスブックでは「素早く動き破壊せよ」というルールができた。壊していいの?と驚きを呼ぶルール。理由は、安定よりも進化を優先するというメッセージ。ただ、そのあとアプリ開発基盤ができてインフラがぶっ壊れすぎてて全然乗ってくれる人がいない、となったら「インフラを安定させつつ素早く動け」みたいなわりと無難なルールに変更された。ルールは時期によって変わる、と。

あとはアップル復活のエピソードとか、Amazon が初期にドアを机にしていた倹約精神とか、わりと有名どころ。

文化は行動の積み重ねである。言行一致。
文化は行動の積み重ねなので、一度決めたらあとは放っておいてよいものではない。

2016年大統領選。ヒラリーがメールを個人サーバで扱っていた。それにより直接的に因果関係はないだろうが文化として「利便性のためならセキュリティを犠牲にしてもよい」という文化が造られ、結果、同じく個人サーバでメールを使っていた他のメンバーがハッキング(というよりも単に Google を語るパスワードリセット依頼メールにひっかかった)を受けて諸々メールが流出。その影響を受けてトランプ勝利に傾いた面がある。

Uber の文化も激しいことで有名。
リーダーは「勝つことにこだわる」組織を作りたかったのだろうが、勝つためならわりと「何でもする」文化が出来上がった。勝つためなら法律違反も許される、という。リーダーが明確にそう支持したわけでなくとも、ひとつひとつの行動が積み重なって文化となり、良くない文化はどこかで綻びを生じる。

武士道。1186年から1868年までおよそ700年間が武士の時代
;; もうちょっと粒度高く日本史を知っている身としては、そこの700年を丸めるの随分乱暴だなと思わなくもない

武士の時代には、倫理的な葛藤やいろいろな問題に対処するフレームワークがあった
葉隠』を「武士の知恵をまとめた最も有名な武士道の著」として紹介している
葉隠』のなかの「武士の四誓願」では、
1. 武士道を誰よりも率先して実践する
2. 主君に忠誠を尽くす
3. 敬意をもって両親に孝行する
4. 思いやりの心で他人を助ける
と書かれている

価値観よりも徳(善い行い)の体系が文化であった。
武士道は死を意識する。『葉隠』の最も有名な一節は「武士道とは死ぬことと見つけたり」というアレ

武士の規範である八個の「徳」: 義、勇、仁、礼、克己、誠、名誉、忠義。
それぞれ互いに絡み合って、どれか一つだけだと歪んだ結論にいたりそうなところを支えているのだ、と


殺人で19年間刑務所にいたシャカ・サンゴールという男
著者は彼と個人的に友人になり、刑務所内の「団」をまとめあげた話を聞いた
ナポレオン・ヒル『思考は現実化する』とかジェームズ・アレン『原因と結果の法則』を副読本書きつつ読書会やってたとか。

リーダーが自分たちの文化をどう捉えているか、はあまり大切ではない。
リーダーが思う「企業文化」は社員の体験からは程遠い
リーダーの価値観が組織文化に反映される。ゆえに企業文化を変えるには、リーダーは自らを変える必要に迫られる。

行動は理念に勝る。
信頼が大事だといいつつ社員の信頼を裏切る行為をしていれば、文化はできない
初期設定、デフォルト設定が大切。
ルール・掟を自分の都合がいいように解釈するのはよくあること。

チンギス・ハン(昔の名前は「テムジン」)は歴史上最も優れた軍事指揮者。広大な土地を征服。
テムジンは子供の頃、部族以外にも信頼できる人間がいることを体験する。

自問自答で、問いがゴミなら答えもゴミになる
「なぜアフリカ系アメリカ人の CEO が少ないのか?」では人種差別がどうこうという答えしか得られないが、
「なぜ貧困地帯で育った黒人がマクドナルドの CEO になれたのか?」と問えば、もっと有益な答えが得られる
;; トンプソン氏 https://jp.reuters.com/article/mcdonalds-thompson-idJPKBN0L200P20150129

文化をデザインすることは大切。
文化とは理想を追いかけること。完璧にするのではなく、昨日よりも良くする。
他の文化から気づきを得るのはいいが、そのまま真似はしないこと。

顧客第一主義の落とし穴。
顧客は既存プロダクトにはあれこれ注文をつけるが、まだ存在しないプロダクトについては曖昧な意見しか持ってない。

時が流れると、うまく機能していたルールが文化を破壊し始める時期がある
文化が壊れ始めてる兆候は
・辞められては困る人がよく辞める
・自社の最重要課題がうまくいってない
・ありえないことをやる社員がいる

ショッキングなルールは「なぜそれがあるか考えさせる」もの
一方で「見せしめ」という手もある。悪いことが二度と起こらないように、絶対忘れない警告とするもの

2012 年ラリー・ペイジジョブズと話したあとベン・ホロウィッツにも相談しに来て、
話し合った結果、アルファベット社を置いて Google をその下のひとつに位置付けることにした

前著『HARD THINGS』のポイントは「平時」と「戦時」では経営スタイルが異なるということ。
ほとんどの CEO は「どっちか向き」であり、両方できる人はあまりいない
チームも「ボスは戦時 CEO の方がいい」というタイプがいたりする

『「帝国」ロシアの地政学』小泉悠

2022-06-09 開始, 2022-06-11 読了

ロシア軍事研究者兼自称オタクの小泉悠さんの本。
より軍事面にフォーカスした新書はこちら: 『現代ロシアの軍事戦略』小泉悠 - ミームの死骸のmemex(拡張記憶)

プーチンは「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的悲劇」と言った

北方領土「ビザなし訪問」は内閣府北方四島交流事業によって可能になってる
基本、船で。船の中と到着地点では目と鼻の先だけど2時間の時差がある
飛行機を使わないのは、船だと「宿泊」しなくていいから。朝に島に到着して夜は北海道に戻る。北方四島で日本人が事件に巻き込まれたり死んだりしたらロシアの行政機関に巻き込まれ、政治的によろしくない

四島の国後島の施設の看板にはロシア語ででかでかと「クリル諸島はロシアの領土」と書かれている。
島で合うロシアからの旅行者は「日本は一度行ってみたい」と屈託なく言う。認識的には、そして実態としても、北方四島は完全にロシアの土地。

ロシアの言説では「国民」はロシア国籍を持つ人ではなく「(スラブ)民族」なので、それを根拠に他国への介入を行ったりする

ここで目次。ざっくりとこんな話をするぽい

地政学

地政学
ロシア人はこの言葉が好きで、よく会話に「ジオポリティカ」と出てくる。が、単に周辺諸国との関係くらいのニュアンスで使われる
いま日本で地政学という言葉が使われるのは、基本的に米英流派。イギリスのマッキンダーが提唱、米国のスパイクマンが完成させたもの。
つまり、大陸勢力(ランドパワー)がユーラシア大陸の中枢(ハートランド)を支配したがり、英国や米国がシーパワーやでってやつ
英米流の地政学では、科学というよりもユーラシアに対する戦略論という性格が強い。
実際、日本もランドパワーである中国の拡張に直面しているので、英米流の地政学が人気になる。

だが、ドイツやスウェーデンの人の考える「大陸系地政学」は考え方が違う。

ソ連後のロシア

ソ連は、共産主義という理想に向かって諸民族が結託したものだった。
だが現在のロシアはもともと、ソ連からの決別のためになし崩し的に独立したもの。そこに強いイデオロギーはなかった。
国家に歌詞すらなかった。プーチン政権下の 2000 年代になんとか歌詞をつけたが、我らが祖国よ、と言うだけで特に哲学はない。

新生ロシア。ソ連崩壊後の身の振り方がわからない。西欧化の挫折。
そこで地政学に自我を求めたのが現在の帝国主義的ロシアといえる

プーチンの定義する「主権国家」は「自由の問題であり、自らの運命を自分で決められること」としている。世界で10にも満たないと思われる。
プーチンにしてみれば、たとえばドイツは主権国家ではない。日本も主権国家ではない。
インドや中国は主権国家である。

プーチンによれば米国は「戦争に見えない戦争」を仕掛けている
内政干渉、圧力を超法規的に正当化することで、違法な脅迫を行う

2000年に成立したばかりのプーチン政権は、エリツィン政権末期に悪化した西側諸国との関係改善を掲げ、
今では考えられないほど米国に配慮した対外政策をしていた。

ソ連の認識では、冷戦の終結は世界の破滅を防ぐために米国と共同で成し遂げたこと。
だが、冷戦の終結と国家の崩壊が同時に起こったことで、資本主義という「正しい」ものが共産主義という「誤った」イデオロギーに勝利した、という位置づけがなされてしまった。

ロシア勢力圏と旧ソ連国家

グルジア (ジョージア) はソ連時代を「占領されていた」と見ている。バルト三国も同様。

ロシアとウクライナの文化的相違はけっこう大きい。
ウクライナポーランドリトアニア・トルコ・タタール/クリミアなどなどの影響も受けているから。
ボルシチ、カツレツなどはウクライナ料理だけどロシア料理として知られていった

クリミアのロシア併合時、プーチンが演説で語ったのは
・クリミアはもともとソ連
・クリミアの住民自身がロシアへの併合を望んでいる
キエフ政変は西側諸国の陰謀だった
という内容。聴衆にはとても響いていた

プーチンクリミア半島を併合しようとする場面で「ウクライナ国家の領土的一体性を尊重してきました」と語る
ブラックジョークのように聞こえるが、
ブラックジョークではないとすれば、これには「ウクライナ主権国家ではない」という前提があり、ウクライナはロシアの一部として、という暗黙の前提が含まれている。
つまりロシアの一部であるウクライナNATO から守ることはロシアにとっていいことであり、ゆえにウクライナにとってもいいことである、と。

クリミア半島の併合は、ソ連崩壊語のロシアの動きで言うとわりと例外的なケース
むしろそのあとのドンバス地方の件が、ロシアの「あるある」介入パターン

ロシアの軍事力は強くもないが弱くもない。広大な面積を守る以上、薄いところは出る。
ロシアが実際にバトってきたのは西側/NATO でなくて旧ソ連国家

ロシアと中東

シリア介入。
2010年代にアラブ諸国を席巻した「アラブの春」動乱。
2011年にシリアもこの波が来て、アサド家の独裁を打倒する動きが起こる。いわば革命が起こる。
そこでロシアがアサド家を支える。
中東においてロシアはたしかに存在感を増したが、米国に取って代わるほどではない。

そもそもロシアはなぜシリアに介入したのか?
対外・安全保障政策的にも、ロシアにとってあまり中東の優先度は高くない。
米国にとっては石油などエネルギー資源の安定供給という意味で中等の重要度は高いが、ソ連やロシア意宇にとってはそうでもない。
シリア介入は、ウクライナの介入のあとに起こった。
ウクライナ問題で悪化した立場を何らかの形で改善しようとして行われたのではないか? 米国にはできない汚れ仕事をやることで。
ただまぁ、そういう動機があったとしても、結果を見ると効果はわりと微妙だねと。

ロシアと北方領土

北方領土
2018年、プーチンが突如「年内に何の前提もなく平和条約を結ぼう」と提案した。ウラジオストク発言。
第二次世界大戦末期、ソ連は日ソ中立条約を一方的に履きして日本に進行した。ポツダム宣言受諾後も戦闘を続け、1945年9月1日までに北方三島を占領した。
1951年のサンフランシスコ講和条約で、日本が樺太とその近接諸島の権限/請求権を放棄した。
だが「誰に対して」放棄したみたいな話はない。ソ連は当初「ソ連の主権を認める」という文を入れさせようとしたが認められず、条約に調印しなかったため。

冷戦後の日露の議論は、北方領土はどちらの領土とも定まらない、という前提の元で重ねられてきた。
ここが決着してから平和条約を結ぼう、というのが東京宣言(だったはず)
それをスルーして平和条約やろうや、というのがプーチンの発言。
その場で安倍首相は答えを避けたが、その後明確に拒否した。
が、そのあと「プーチンの発言は平和への意欲」と好意的に解釈して急に仲良くなる。
(東京宣言をスルーして)日ソ共同宣言をベースに平和条約を、という方向へ。
だがプーチンとしては北方領土は「第二次世界大戦の結果としてロシア領になった」という立場を崩していない。
島を「引き渡す」といってるだけで、引き渡された島がどちらの主権になるかは明記されいない。
北方四島、うち2島は小さいのでロシア的に軍事の優先とも低いが、のこる2島は広く、そして既にかなりロシアの軍事施設が展開済。こちらは引き渡したくないだろうと

ロシア的には長期戦が有利。占領時の元島民もすでに老人、あと 10,20 年もすれば
だいたい死んで、住民感情として日本への変換を望む声は弱まっていく
軍事的に重要というのは、四島を日本に返すと、そこに米軍基地が建設される恐れがある。MD (ミサイルディフェンス) 構想とか言ってるけどあれは攻撃的性格のものだろう、と。
そして、かりに日本とロシアの間で「返還された島に基地は作りません!」と約束しても、米国が日米安保の名のもとに基地建設を遂行する恐れがある。これは妄想ではなく、日本は基本的に米国が基地を作りたいといえば拒否できない、という日米の密約が琉球新報?によってリークされている。沖縄島民がどれだけ反対しても基地は撤去されない。
日本は主権を持たない国だ、そことなんの約束をしたところで米国に強く言われれば日本は従うだろうと言う考え

ロシアと中国と日本

対中国の視点でロシアと日本は協力できるという意見もあるが、そもそも地政学的な接し方とか米国との関係とか、中国を「何の視点で」脅威とみえているか、二国間で違いがありすぎる
たとえば中国の人口が爆発したところで別にロシアより中国のほうが豊かだから不法移民が来るわけでもない
中国を隣人の位置に留め続け、対立しない、がロシアの基本戦略
味方ではないが敵でもない
ロシアが日本と連携して中国を敵に見立てたりしたら、それこそヤバくなる。だから、中国を共通敵として日露が結託する道はない
中露の関係がどこまで良好なままか、という面もあるが

北極

北極。
ロシアの面積の 1/5 が北極に分類される
第二次世界大戦中、北極は米英→ソ連の輸送路だった。当時の技術ではもちろんかんたんな道のりではなかったが。
そして冷戦が始まる、つまり米ソが対立し始めると、北極圏は輸送ルートではなく侵攻ルートとして警戒を持って見られるように
相互に核ミサイル基地を置いたり原潜を泳がせたり監視飛行したり、にらみ合いの最前線
ソ連は核実験場を北極に配置
温暖化により北極の氷が溶けアクセスしやすくなってる
北極は資源が豊富で、影響力を保ちたいロシア
北極海に面する4国のうちロシア以外はNATO加盟国